事業承継において一番大切なことは、事業承継の必要性に気づくこと
「事業承継において一番大切なことは、事業承継の必要性に気がつくこと」だと、私は思っています。
前回の記事「事業承継問題と当事業所の決意」でも記載しましたが、①経営者の平均年齢は66歳、②中小企業の平均引退年齢は中規模で67.7歳、小規模で70.5歳、③60歳以上の後継者不在率は48.7%となっています。
※上図の出典:2018年版中小企業白書、中図の出典:2013年版中小企業白書、下図の出典:2018年版中小企業白書
別の視点で「経営者の年齢別事業承継の予定時期」をみると、60歳以降から急激に事業承継が必要だという認識が広がるものの、70歳以上になっても、承継時期が5年以上という経営者が多くなっています。
※出典:2014年版中小企業白書
一方で、「事業承継時の年齢別の事業承継後の業績推移」を見ると、若いときに事業承継が進むと、それだけ業績が伸びやすいということが分かります。
※出典:2014年版中小企業白書
事業に精魂を注いでいる経営者ほど「若くて未熟だから後継者に任命するのは早い」、「日々の業務で精一杯で事業承継に手が回らない」など、様々な想いをもっていると思います。
そんななかで、本当に事業の成長を考えるのであれば、若手に任せる方が良い結果が生まれやすいという統計結果もあります。
経営理念や創業時からの想い、社風など変えてはいけないことも沢山あります。
しかし、外部環境の変化に対して、若い世代は、過去のしがらみが少ないため、思い切った行動がとりやすく、IT化や海外展開など外部環境変化に沿った施策へ目を向けることもできます。
私の知る後継者も、こういった方が多いと感じます。
逆に、年齢が高まるほどIT嫌いや、現状から業務を変えたくないという人が多くなると感じています。
事業の承継というのは、現経営者にとって人生でも非常に重要な決断のひとつです。
これまで事業を継続・成長させてきた自負もあり、生き甲斐であるかもしれません。
そんな中で、経験も知識も浅い後継者に引き継ぐということは、非常に苦しみを伴うことです。
現在の経営に精一杯努力されている経営者も多いと思います。
こういったかたの中には、ボンヤリと事業承継という言葉が頭の中にあれど、事業承継セミナーに参加するなどの行動に至らないことも多いと思います。
しかし、真剣に経営を考えていくのであればこそ、早期に事業承継の必要性に気がづくことこそが、事業の継続・業績拡大につながる、強力な第一歩となるのではないでしょうか?
(中小企業診断士 布能弘一)