優れた企業に共通する経営理念
おはようございます、中小企業診断士の布能です。
以前、経営理念・経営ビジョンを考えるという記事を書きましたが、現在読んでいる書籍『マッキンゼー経営の本質~意思と仕組み~』の中に、『優れた企業に共通する経営理念』という内容がありましたので、ご紹介させて頂きます。
経営理念の重要性
まずは、同書籍の中の、IBMの会長のトーマス・J・ワトソン・ジュニアの経営理念についての考え方をご紹介します。
競争を生き抜き成功を収めるためには、どんな企業も、あらゆる方針や行動の前提として確固たる信条を持たなければならない。私は固くそう信じる。成功を導く最も大切な要素を一つだけ挙げるとしたら、それは、この信条を守ることではあるまいか。
組織の基本的な哲学、精神、活力は事業の成功と綿密なつながりがあり、その重要性は技術力、資金力、組織力、アイデア、タイミングなどをはるかに凌ぐ。もちろんこれらの要素も大切だ。だが、社員が会社の哲学を深く信奉し、誠実にこれを実現することの方がずっと大きな意味を持つ。
深い言葉ですね。以前のブログにも書かせて頂きましたが、経営理念は羅針盤ともいうべき大切なものだということが良く分かります。
経営理念は自然発生するものではないため、経営トップが「我々のやり方」としての経営理念を自ら掲げる必要があります。また、経営理念を浸透させるためには、経営理念の明示とともに、経営者自らが行動で示す、経営幹部を教育していくなど、実践や指導を通じて浸透させていく必要があります。
優れた企業に共通する経営理念
続いて、本記事のメイン内容の『優れた企業に共通する経営理念』ですが、同書籍には以下のようなものが挙げられてました。
- 高い倫理規範の維持
- 事実に基づく意思決定
- 外部環境への適応と変化
- 実績に基づく社員の評価
- スピード重視の経営
1.高い倫理規範の維持
高い規範を掲げる企業には、以下のメリットがあります。
- 自分たちが正しいということを信じることができる。
- 優秀な人材をより強く引き付けることができるので、組織力が高まる。
- いつも正しいことをしていると確信でき、顧客、競争相手、さらには社会とよりよい関係を維持できる。
しかし、多くの企業には高い理想を経営理念にハッキリと盛り込んでいません。「私は誠実で信頼できる人間です」と広言するのは気恥ずかしいことですが、ハッキリと経営理念に盛り込むことで、営利を目的とする企業にとって、道を踏み外さないための極めて堅固な土台となります。
2.事実に基づく意思決定
同書の中に、「事実に基づいて戦略を立て決定を下しているのは一握りの企業に過ぎない、大抵の問題について、『もう心は決まっているんだ』といい、自分の考えを改めようとしない経営者が多すぎる」という、著者の経験の紹介があります。
事実に基づく意思決定のメリットには以下のものがあります。
- 事実に基づく気風が根付くことで、検討や討議の質が上がり、意思決定の質が上がる。
- 新たな事実が判明すると、その事実に対して検討・計画・実行が変更されるので、高い柔軟性が備わる。
- 事実を尊び客観的な姿勢が全社に広がれば、上下関係ではなく、「何が正しいか?」という判断のもとで進言が行われやすく、モラールが高まる。
3.外部環境への適応と変化
「事実に基づく意思決定」に繋がる話ですが、事実を重視した経営を行うことで、顧客ニーズ、価値観、考え方などの外部環境の変化への感度が高まります。
企業は、新しい製品・サービスの提案、適正価格への再設定など、内部的な変化により消費者に利益をもたらします。しかし、繁栄を維持するためには内部的な変化を起こすだけでなく、外部環境の変化にも心を開き、新たな事業機会を活用することで、感度と柔軟性の高め、成功を維持する企業となることができます。
4.実績に基づく社員の評価
優れた企業は、社員の行動や成果などの主観を排除した事実に基づく実績主義を行っています。事実に基づく社員評価を経営理念に掲げることで、公平な業績評価の導入を促進することができます、公正な業績評価が導入されることで、規律を徹底する経営システムの順守が促されます。
※(ブログ記事著者の注釈)実績主義は、日本の年功序列の風土とは合わないところもあります。なぜなら、欧米では、仕事に対しての人を集め不要になったら解雇するという雇用方針が普及していますが、日本では、一度雇用したら最後まで面倒を見るという終身雇用が普及しています。本書とは別の書籍では、戦後の日本経済の発展をもたらした3つの神器の1つとして、終身雇用が挙げられています。とはいえ、現代の日本では、年功序列+成果主義の評価の普及が進んでいるといわれています。
5.スピード重視の経営
現在では、競争のグローバル化が進み、また、同じ地域に多店舗展開をする大手企業が進出するなど、あらゆる地域で競争が激化しています。競争に素早く対応することに比べ、経営のテクニックは二の次、三の次で、迫りくる競争相手を念頭に、素早く対応していく必要があります。
スピード経営の大切さを知っている企業は「いまやる」を常に心がけています。「スピード重視の経営」を経営理念で標榜することで、競争の激しい中、成功を収める秘策の一つとなることができます。
以上、『マッキンゼー経営の本質~意思と仕組み~』より、経営理念の章を要約してみましたが、本記事はいかがだったでしょうか?この記事を通じて、経営理念の大切さや、経営理念の内容の吟味などのお役に立ったのならば、幸いです。
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