事業承継の後継者にふさわしい人とは
事業承継における後継者にふさわしい人は、どんな人なのでしょうか?
本記事では、中小企業白書や小規模白書での統計結果をみつつ、私の経験・考えを述べていきたいと思います。
後継者にふさわしい人に求められるもの(2013年版 中小企業白書)
個人事業主、法人と形態別で若干違うものの
- 親族であること
- 事業・業界に詳しいこと
- 経営意欲が高いこと
- 決断力、判断力が高いこと
- リーダーシップやコミュニケーションが優れていること
などですね。
ザックリ見ると、個人事業主では後継者が親族であることが圧倒的に求められています。一方で法人は、意欲・知識・能力・資質などが求められています。
統計データと比べると偏りがある話ですが、私個人の聞いている話では、「親族だから後継者にしたい/親族だから後継者にしたくない」というのは拮抗していると感じます。
一方で、事業・業界に詳しいことや、経営意欲、コミュニケーション能力は、ほぼ求められています。特に、経営意欲とコミュニケーション能力で判断していることも多いと感じます。
社外の第三者を招いた場合に後継者に求められるもの(2014年版 中小企業白書 )
社外から後継者を招き入れる場合には、経営意欲の高さが特に求められています。
次いで、業界知識、経験、リーダーシップなどが求められています。
社外から後継者を引き入れる外部招聘については、私の周りには多くないのですが、先に書いた通りに経営者意欲が高いことを求める人は多いと感じます。
知識は教育できますし、経験は時間があれば解決できます。リーダーシップもある程度までは教育できます。
そういった意味で、時間や教育で解決しづらいのは経営意欲なのかもしれません。
小規模企業における後継者に求められる資質・能力(2017年版 小規模事業白書)
小規模法人・個人事業主で共通するのは
- 知識
- 経験
- 覚悟
- 人間性
- 営業力
- 人的ネットワーク
- コミュニケーション能力
個人事業主では高くないが法人だと求められやすくなるものに、決断力、リーダーシップなどが加わります。
大半の結果は、ここまで出てきた統計データの結果と被りますが、初めて出てきたのが人間性・人的ネットワークです。
人間性は経営者の根底となるものであり、人的ネットワークは、業種によっては非常に重要な要素です。
これまで何故の統計では項目がなかったのかが不思議なぐらいです。
私の印象(まとめ)
ここまで出てきたものでは
- 業界の知識・経験
- 経営意欲
- リーダーシップ
- コミュニケーション能力
は高めだったと感じます。
経営意欲以外は、効果の大小はあるものの教育ができたり、時間が解決してくれたりすると感じます。
ここまでの話を踏まえての私の印象ですが、経営者自身が納得できる人であり、かつ経営意欲を持つ人がいるのであれば、素質が多少足りなくてもどうにかなることが、ほとんどだと感じます。ただし、
そのために早い段階で事業承継を進める必要があります。
一方で、経営意欲が足りない人を後継者に選んだ場合は、「本気で変わろう」という状況に陥らないと難しいと感じます。
人が変わるキッカケとなるのは、心を入れ替える衝撃的なことを体験した、付き合う人達が変わった、そうせざる得ない環境に追い込まれた、挨拶・礼儀・清掃などのコツコツとしたよい習慣の積み重ねなどがあります。
ただし、こういったことを他人である先代経営者が後継者にやらせるのは、なかなか難しいとも感じています。
(中小企業診断士 布能弘一)