事業計画は目的や開示相手によって違いがある
「事業計画」は一言であるものの、実際には様々なものがありますよね?
個人的に「事業計画の作成セミナー・事業計画の作成研修」というポスターなどを見ると混乱するタイプです。
事業計画のアレコレ
事業計画といわれる、以下のようなものがあると思います。
- 創業計画
- 成長、革新計画
- 融資計画
- 投資計画
- 再生、改善、金融支援計画
- 従業員との経営目標の共有計画
- 会社の健康診断、経営の見える化の計画
- 協業計画
- 事業承継計画
- 知的資産経営報告書
とはいえ、これらは重複していることも多くあります。
例えば、以下の組合せが考えられます。
- 創業計画 × 融資計画(信用保証協会や金融機関向け)
- 創業計画 × 投資計画(ベンチャーキャピタル(VC)向け)
- 成長、革新計画 × 融資計画(信用保証協会や金融機関向け)
- 成長、革新計画 × 投資計画(VCや、一般投資家向け)
- 再生、改善、金融支援計画 × 融資計画(信用保証協会や金融機関向け)
- 事業承継計画(後継者向け。成長、革新計画や、再生、改善、金融支援計画、知的資産報告書などを含むこともある)
- 知的資産報告書(あらゆる利害関係者向け、上記の多くの計画書の複合型)
他にもこんな切り分けも考えられます
- 創業計画(なんとなく創業を考えている人、創業を真剣に考え始めた人、創業済みの人)
- 創業計画(生業、家族経営、組織経営)
- 成長、革新計画(融資。補助金。事業の購入/売却(M&A)。社内の予実管理目的、社内組織の整備目的、新規事業開発)
- 協業計画(農商工連携、産学官連携、同業連携(水平連携)、異業種連携(垂直連携))
- 事業承継計画(親族内の後継者、親族外の後継者、事業売却(M&A))
まだまだ、切り分け方法があると思います。
こういったことを考えずに、「事業計画の作成セミナー」と書かれても、分からないですよね?
誰に向けかによって変わる、計画の精度、実行可能性、ハードルなど
同じ事業計画であったとしても、誰に向けた計画書かによって、求められる知識や精度が大きく変わることがあります。
例えば以下のような感じです
金融支援(返済繰り越しなど) |
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通常の融資 |
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投資家向け |
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社内・従業員向け(経営目標と連動した人事評価) |
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計画に共通すること
ところで、すべての事業計画の策定において、知識、精度、実行可能性などが全く変わるか?、といえばそうでもありません。
共有する所も多々あります。
例えば、以下のようなものです
- 事業を行う指針、経営理念、コンセプトなどの設定
- 外部環境、内部環境などの経営環境の分析
- あるべき姿と現状の姿の間にあるギャップ(経営課題)の抽出
- 経営課題を達成するための目標設定、短期・中長期の目標設定
- 目標を達成するための具体的な手段、行動計画
- 計画をPDCAサイクルでまわすこと
※PDCAサイクルとは、Plan:計画、Do:行動、Check:計画と結果のギャップの確認、Action:計画の見直しなどを行う何度も見直すこと(サイクル)です。
個人的に、事業計画の作成セミナーといっても、目的や相手別の違い、共通点を考えていないでセミナーを開催することが多いと感じます。
以前、ある創業セミナーに行ったときに、受講生は地域で出店するような小規模事業者が多いのに、セミナーの話は投資家から出資を受けるベンチャー向けだったことがありました。
この場合は、資料を作った講師が悪いのか、ターゲットを正確に伝えなかったセミナー主催者が悪かったのか分かりません。とはいえ明らかに、もどかしいセミナーでした。
しかし、事業計画特有の共通点もあるため、なんとなく創業者向けのセミナーとしての形を保っていました。
とはいえセミナー講師が必ずしも悪いというわけでもありません。
セミナーは開催するまで、どんな人が来るかはわからないことも多いです。
たとえば、創業塾で飲食店向けの資料を作ったら、IT系での創業者が多かった。などはよくあります。
限られた時間でなんでも教えることができるかといえば、これまた不可能です。
なんというか、歯がゆいですね…。
(中小企業診断士 布能弘一)