マーケティング3.0について
最近、「コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則(著)フィリップ・コトラー、他(初版)2010」という本を読み始めています。
この書籍のマーケティング3.0について、自分の知識を織り交ぜつつ、ブログネタにしてみました。
(著)フィリップ・コトラー、ヘルマワン・カルタジャヤ、イワン・セティアワン
(監訳)恩藏 直人
(翻訳)藤井 清美
マーケティング1.0~3.0について
マーケティング1.0は、製品・サービスが中心の時代です。
この考え方は産業革命以降ずっとあったのですが、体系だったのは1950年以降です。この頃は、「生産すれば売れる」という好循環があり、機能面を中心とした製品・サービスの開発を中心にマーケティングが考えられていました。マーケティング・ミックスや、4P、製品ライフサイクル、セグメンテーションなどが作られたのはこの当時です。
マーケティング2.0では、主役は製品から消費者に移り、消費者を満足させる製品・サービスの開発が求められるようになりました。
体系だったのは1990年代ですが、1970~80年ぐらいから消費者中心の考え方になっていきました。この頃のアメリカは、市場の飽和などにより「生産すれば売れる」というプロダクト・アウトの考えでは物が売れなくなりました。このため、消費者に寄り添ったマーケット・インのマーケティングへと変わりつつありました。顧客カードが消費者に配られ、購買分析をして商品を販売する手法も発展してきました。この頃に、ターゲティング、ポジショニング、顧客リレーションシップ・マーケティングなどが生まれたました。
更に、1990年代のインターネットの普及より、消費者が情報を発信できるようになり、また、消費者と生産者がダイレクトで繋がるインターナル・マーケティングなどが普及し、より消費者のニーズが重要となっていきました。
マーケティング3.0は、消費者の購買行動や考え方が大きく変わり、企業は製品・サービスに「機能・感情」だけではなく、個人の問題を解決してくれるという精神的充足まで求められるようになりました。このため、企業はミッション・ビジョンなどを含め、どのような価値を消費者に提供するかが大切になりつつあります。
マーケティング3.0自体は、2005~2007年頃に体系だった考え方です。SNSや、携帯電話・スマートフォンの普及が背景にあります。この頃になると、製品・商品のことは販売者・生産者以上に、消費者が知っている時代になりました。もちろん製品の機能面では生産者の方が知識を持っています。しかし、高い専門知識を持つ消費者や、製造者が考えつかないような活用方法を編み出す消費者などが登場してきます。また、製品が売れるかどうかも、ショッピングサイトの掲示板や、ブログ、Facebook、Twitterなどで簡単に発信できるようになりました。情報が氾濫する中で、より良い製品を求める消費者にとって、ブログやSNSなどでの他人の評価や口コミなどは、商品判断の重要な要素となりました。
このような中で、発言力や専門知識を持つ消費者と生産者がタッグを組み、共同での創作による製品開発も行われるようになってきました。
他に、不正や公害をまき散らかす企業は許さない一方で、社会貢献する企業の製品を推奨して購入する風潮も高まってきました。
※同書籍の「表1-1マーケティング1.0~3.0の比較」より
マーケティング1.0 | マーケティング2.0 | マーケティング3.0 | |
製品重心の マーケティング |
消費者志向の マーケティング |
価値主導の マーケティング |
|
目的 | 製品を販売すること | 消費者を満足させ、 つなぎとめること |
世界をより良い場所に すること |
可能にした力 | 産業革命 | 情報技術 | ニューウエーブの技術 |
市場に対する 企業の見方 |
物質的ニーズを持つ マス購入者 |
マインドとハートを持つ より洗練された消費者 |
マインドとハートと精神を持つ全人的存在 |
主なマーケティ ング・コンセプト |
製品開発 | 差別化 | 価値 |
企業のマーケティ ング・ガイドライン |
製品の説明 | 企業と製品の ポジショニング |
企業のミッション、 ビジョン、価値 |
価値提案 | 機能的価値 | 機能的・感情的価値 | 機能的・感情的・ 精神的価値 |
消費者との 交流 |
1対多数の取引 | 1対1の関係 | 多数対多数の協働 |
しかし、すべて事業者が、マーケティング3.0を意識しているかといえば、そうではありません。それどころか、マーケティング2.0を意識している企業すら多くないといわれています。しかし、発展を続ける企業は、マーケティング2.0や3.0を応用したマーケティングを行っています。
現在の経営環境は、非常に激しい変化の中にあります。技術の進展と複数技術の結合、新たなサービスの登場、消費者の趣向の多様化、大手企業の市場進出・拡大、グローバルな競争関係など、様々な変化が、逐次起こっています。
このような中で、今一度、自社の価値を考える必要があることを、マーケティング3.0は訴えているように感じます。
(中小企業診断士 布能弘一)